我振り返る。
僕は家にいる。
狭くて汚くて、一度地震でも起これば大量のgearに押し潰されて息絶えそうな部屋にひとりいる。
思えば僕は休みの日にひとり家にいたことがあまりない。
毎週どこかに出撃している為だ。
そんな僕が何故に今週末に限って家にいるのかというと、実は体調を崩した為だ。
いや、正直、崩していたと言った方が正確だ。今週は二日間、高熱でのたうちまわり会社を休んだ。やはり毎週の出撃が体に応えているのだろう。ここのところ毎週ご一緒しているかずと隊員もさぞかしへばっていることだろうと電話してみる。「あっ、ベイダーさん?今酔っ払ってるんですよー!げへへへ」といつもの様子だ。挙げ句には「ベイダーさんテンション低くて面白くない」と電話を切られてしまった。やはり僕よりも新型の体は耐久性が違うなと感嘆したものだ。
でも今はびっくりするくらい元気だ。
元気ではあるが、二日も会社を休んでいる。僕が抜けた穴を必死で埋めてくれた後輩を尻目に、元気になったからとはいえ、氷点下のキャンプに行って参りますとはいくまい。だって大人だから。
しかし外はすこぶる良い天気だ。昨日までの吹雪が嘘のようだ。いや嘘ではないな。昨日本州から届く予定の物がまだ届かない。きっと嵐で飛行機が飛ばなかったのだろう。本州の頃であれば、運送屋に電話して文句の一つも言うところではあるが、こんな北の国で生活するとそんな些細な事はどうでも良くなる。人間の事情なんてこの大自然の前では何の意味も持たないのだ。
しかし良い天気だ。しかも珍しく僕が家にいると、後輩達がメタルスライムでも見るように怪訝そうな顔で悪態を突いてくる。こういった事象が重なり、僕は家を飛び出したのだ。
その結果がこうだ。やはり男独り無計画に家を出るとろくな事が無い。
事の顛末はこうだ。
僕がふらり外に出たからといって特段行く所なんてない。隊長宅を急襲してやろうかとも思ったが、僕が病原菌を抱えているのは隊長もご存知で在ろうから、きっとフマキラーでも持ち出してシュッシュッと追い返されるのがオチだ。こういう時はパトロールに限る。僕は秀に足を向けた。
こういう時に限って誰もいないものだ。誰かを見つけて図々しくもそのまま付き纏ってやろうと目論んでいたのだが、宛てが外れてしまった。途方に暮れた僕は青空を眺めながらしばし物思いに耽った。
何故に体調を崩したのか。
人間暇だと突拍子も無い事を思いつくものだ。
栄養が足りない。
誰が見ても醜い腹を抱える僕が何故かそう思ったのだ。青空を見る余り、上ばかり見ていたからかも知れない。灯台基暗しとはこの事であろうか。足元の雪でも見ながら考えれば、もっと違った建設的結論になっていたはずだ。
とにかく僕は栄養が足りないと思ったのだ。やはり毎日の外食が良くないのだと。
そこで僕は電気屋に向かった。旨い飯を作ってくれる機械を探しに。
そこで店員のおばはんが丁寧に僕に説明してくれ、連れ帰ったのがこいつだ。
今の僕は炊飯器に関してはその辺の人よりも詳しいと思う。それぐらい暇にかまけて長時間講義を受けてきた。ちなみにそのような長時間居たにも関らず、最後までひとりものだと言う事ができず、五号炊きになってしまった。
三洋電機が特許を持つ踊り炊きとはいかがなものか早速試してみた。
五層の銅釜はきっと僕を癒してくれるに違いない。
この記事を書くのにも飽きてきたの出来たのがコレ。
ドーン
キムチウインナー目玉丼
なんだ。目玉焼きかよ。と思う無かれ。
外食三昧の僕にとっては目玉焼きはフレンチよりもありがたい料理なのである。
フレンチやイタリアンはお金を出せば食べられるが、目玉焼きはなかなか食べるところがない。
偶にハンバーグに乗っていたりするが、僕が食べたいのは大量の塩胡椒で味付けされたトロトロ半熟の目玉焼きだ。スパイシーな目玉焼きとホカホカの白米が織成すハーモニーは僕を最高の幸せへ誘うのだ。
ああっ、腹が苦しい。
食べ過ぎて胃薬を飲む僕は果たして健康になったのであろうか。甚だ疑問だ。
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