クリパー 序章
12月12日AM9:30
グッドモーニング。
いつもは寝覚めの悪い僕だが今日はやけに寝覚めがいい。
それもそうだ。
今日はビートル夫婦主催のクリスマスパーティーの日だからだ。
それにしても9:30。
約束の場所まではどんなにとばしても2時間半、慣れない雪道なら3時間はかかるだろう。
完全に遅刻だ。
「ちくしょう」
一言つぶやいて、前々からこの日のために用意した服装に着替え部屋を飛び出した。
外は雨が降っていたが、思いのほか暖かい。
このぶんなら道路の凍結も少なく、2時間39分で行けるだろう。
ほっと安心した僕は愛車SERENAのエンジンキーをぶんまわし走り出した。
やはり路面は濡れてはいるが、凍ってはいない。
「いける」
これなら2時間37分で到着できるだろう。
でもそこで僕はあることを思い出した。
「そうだ。ケーキとフルーツを買っていかないと」
それが今回のパーティーでの僕の役割だからだ。
料理のできない僕にみんな気をつかってくれたのだろう。
そんなやさしい気持ちを無駄にするわけにはいかない。
ケーキはもともと小樽の「館」という洋菓子店に決めていた。
僕のような黒いマスクをした機械が店内にいても警察を呼ばれない店だからだ。
ヨーダもよく買いに行くそうだ。
ただ最近は糖尿で甘いものは控えているらしいが。
でも問題はフルーツだ。
普段の僕はあのスイートで甘酸っぱい食べ物をほとんど食さない。
食したとしてもレモンハイくらいだ。
その際も生レモンハイじゃなく、偽レモン ハイを頼むくらい徹底している。
「どうしようかな」
そこで僕の目にあるスーパーが目にとまった。
KYこと西友だ。
全世界最大の小売業ウォルマートが経営する西友ならきっとみんなが満足するフルーツがあるはずだ。
僕はおもむろにハンドルをきった。
やはり西友にはフルーツがあった。
実は前日かずと&みゆき夫婦から普段フルーツを食べないであろう僕にこのフルーツがいいよとこまかくアドバイスをいただいていた。
パイン、りんご、梨、イチゴだ。
ここで僕にある異変がおこった。
パインの日本語名はパイナップルかパインナップルか。
非常に悩ましい。
どっちが正解かわからない。
とりあえず売り場で確認するかとパイン売り場に向かった。
「ちくしょう」
英語で書いてある。
これだから外資系は困る。
日本語を学びたい宇宙人がここにいるっていうのに・・・。
こまったがとりあえずカートにひとついれた。
結局買ったのはパイン、オレンジ、スイーティー、洋梨、グレープフルーツだ。
いただいたアドバイスは完全に無視してしまった。
申し訳ない気持ちで一杯になり、せめてかずとさんが希望していた箱みかんだけでも買おうと売り場を探した。
かずとさんからは箱はMサイズでみかんのサイズはSでとこれまた細かい指示がきていた。
僕はLLが好きだっていうのに。
フルーツ売り場を3周ぐらいしただろうか。
「箱みかんがない」
ショックだ。
これだから外資系は×2
日本の冬は箱みかんとコタツと日本国憲法にも書いてあるのに。
このままでは青いカビの生えたみかんを知らない子供が増えてしまう。
日本の将来を危惧してしまう現象だ。
まあいいかと西友を後にした僕だった。
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