8月27日
陸別町に到着したのは日付が変わった深夜だった。
距離にして350キロ。
さすがに遠い。
でも僕はあまり疲れてはいなかった。
何故ならこの陸別町まで友人の阿婆が運転してきてくれた為だ。
おかしな二人組も付いてきているが。
事の始まりはこうだった。
僕が陸別町に行く準備をしていると、友人の阿婆から電話が掛かってきた。
「タンタカちゃん荷造り進んでる?」
僕は阿婆に鱒子との経緯を話した。
阿婆は「うーん」と唸った後一言、
「俺車出してやるべ」
僕が転勤の準備や鱒子との一件で疲れ果ててるのを知って気を使ってくれたのだ。
だが事がおかしくなったのはこの後からだ。
まづ何処からかこの話を耳にした西という男がくっ付いて来た。
「オラも連れてってけろ」
僕はこの西という男をあまり快く思っていない。
何故なら僕の目を盗んでは、いつも鱒子にちょっかいを出していた為だ。
こともあろうに僕より先にドライフライを渡そうとしたらしい。
とんでもない奴だ。
もちろん鱒子は丁重にお断りしたらしいが。
もっととんでもないのはもう一人の男米田だ。
この男もどこから聞いたのか突然僕の家に現れた。
この男
何がとんでもないのかと言うと
鱒子の元彼だからだ。
でも幌加内の伊藤という美少女と二股を掛けていた事がバレて
鱒子にふられたらしい。
(詳細はタンタカと虹鱒子の恋物語セカンドシーズンにて記載されています。)
いまでも鱒子に未練があると人伝てに聞いたことがある。
何故だかこの油断ならない二人も一緒に陸別町まで来てしまった。
僕の優柔不断が仇となったようだ。
僕達四人は到着したのが夜中だという事もあり
鱒子の実家近くの宿泊所に泊まることにした。
僕が陸別町に来るときは必ずここに泊まる。
勝手知ったるところなのでこのような深夜でもオーケーだ。
僕達が他の宿泊者を起こさないよう、気を使って宿泊所を進むと
明かりが煌々と点いている。
しかも笑い声も聞こえる。
何事かと様子を伺うと一人の青年が近づいてきて説明してくれた。
「今日と明日はお祭りなんですよ」
輝三と名乗るその青年は爽やかな笑顔で僕たちを祭りの宴に誘ってくれた。