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タンタカと虹鱒子の恋物語
The Final Season vol 1
8月26日
鱒子からの連絡はまだ無い。
僕、タンタカが東京に旅立つまで、残された日は少ないというのに。
僕と鱒子は2週間前、土砂降りの雨の中別れた。
「俺、今度東京に転勤になった。できれば鱒子にも付いてきて欲しいと思ってる。
俺にはやっぱり鱒子が必要なんだ」
僕はポケットに隠してあったドライフライをそっと差し出した。
僕はてっきり鱒子も喜んでくれるとばかり思っていた。
でも鱒子の反応は僕が予期しないものだった。
「わたし・・・
ゴメン。
わたし北海道の田舎育ちだから・・・
東京の水は合わないと思う・・・
ゴメン。
一緒に行けない・・・」
そう言い残すと鱒子は土砂降りの雨の中、走り去っていった。
僕は呆然と立ち尽くす。
止む事の無い雨を見上げながら。
あれから2週間だ。
やっぱり諦めきれない。
僕は鱒子の実家がある陸別町に行くことに決めた。
過去何度か鱒子と喧嘩した際、いつも鱒子は実家に戻っていた。
僕がドギマギして実家の門をくぐると
鱒子はいつものエメラルドグリーンの笑顔で僕を迎え入れ
「遅いぞ!!」
そう言って僕をからかったものだ。
今回もきっと僕を待っててくれるはずだ。
2週間前受け取ってもらえなかったドライフライをまたバックにしまい込んで
僕は陸別町に車を走らせるのであった。